飛び出したネギに対して瀬流彦は魔法の射手を放つ。だが幾つもの死線や修行をこなして来たネギに当たるわけもなかった。
「うおお!!」
「ちっ……!!」
光の矢を乗せた拳を瀬流彦に振るうがギリギリの所で避けられる。追撃をかけようとネギは前に出たが瀬流彦は転移弾入りの銃を向けた。
咄嗟に避けたがその隙を突かれて思い切り蹴り飛ばされそのままブロック塀に激突した。

「ネギ君!!クソっ……!!」
ガンドルも銃を構えるが瀬流彦はすでに森の中に走って行った。ガンドルは警戒しつつ急いでネギの元へ駆け寄った。
「大丈夫かネギ君!!」
瓦礫の中からは未だ闘志に燃えるネギが出てきた。頭からは少し血が垂れている。

「無闇に敵に突っ込むなんていくら君でも無茶だ!」
「大丈夫です……それとガンドルフィーニ先生は手を出さないでください」
「何を言っているんだ!!生死が掛かってる戦いに……」
「お願いします」
ネギの目を見てガンドルは悟った。もう何を言っても無駄だ、と。

「解った……だが君の命が危ないと判断した場合は迷わず加勢する。いいね?」
「ありがとうございます。僕の我侭を聞いてくれて」
ネギはガンドルに一礼すると森に向けて駆け出した 。
「高畑先生見てますか……?彼はもう子供じゃない、立派な男です。あなたのお陰ですよ」
ガンドルもネギの後を追い森に消えた。



ガンドルがたどり着くとそこは既に戦場と化してた。木々は薙ぎ倒され地面には幾つも穴が開いていた。
もっともこれは殆どネギの仕業である。瀬流彦はネギの攻撃を避けるだけ。
いや、避けるので精一杯と言ったほうが正しい。ガンドルから見ても明らかにネギが優勢である。

(だがなんだこの違和感は……?ネギ君が押しているのに……徐々に掠り始めているのに何故?)

考えに耽っていると鈍い音が響いた。見るとネギの一撃がきまり瀬流彦が吹っ飛んでいた。

「ぐ……!!くそっ!!」
「……僕はあなたを許さない。ラス・テル マ・スキル マギステル……」
詠唱を始めると周りには電気を帯びた魔力が溜まっていく。


(何故瀬流彦君はこんな無謀な戦いを仕掛けた?実力差は歴然……まさか何か罠が……!!)

その時ネギの魔力の電気が光った瞬間ガンドルは木の陰に人影を見た。そしてその人影が銃を構えているのを。

「雷の暴風!!」
「危ないネギ君!!」



轟音が鳴り響き砂や木の葉や塵が舞う。その中にいたのは……

「ガンドルフィーニ先生!!」
「だ、大丈夫か……ネギ君……」
「くそっ!こ、こんな所でぇ……」
ガンドルと瀬流彦、共に左脇腹から血を流していた。

瀬流彦の支給品は式紙。自分と分身を入れ替え本物は別の場所からネギを狙っていた。
雷の暴風は大技。それ故に隙は大きい。瀬流彦はそこを狙った。
だがそれにで気付いたガンドルはネギの盾となり自らも銃を放ち瀬流彦に当てた。

「ぼ、僕はこんな所で死ぬわけには……みんなに認められるまでは…」
必死の形相で睨むその姿は最早学園での爽やかなイメージは欠片も無かった。
「そんなに……人を殺してまで周りに認められたいんですか!?」
「君に何がわかる!!」
瀬流彦の表情が一層厳しいものになる。
「ぼ、僕だって学園に来たときは将来を期待されていたんだ!それが君が来てからは君ばかり持て囃され……」
瀬流彦はポケットから大量の紙を取り出した。
「だから……君にだけは負けられない!どんな手を使ってでも……」
紙を空中に投げ捨てるとその全てが瀬流彦に変身した。

「しまった!!」
「ハハハハハハ!!!さあ!行け!あいつらを殺せ!」


――ザン!

「え……?」
ネギ達目掛けて飛び出した瀬流彦達はことごとく体を切り刻まれ元の紙に戻った。
「な、何故だ……!?奴らは……なにも……」
「もういいだろ?瀬流彦」
「……!!」
突然の後ろからの声。瀬流彦が後ろを振り向くと黒いスーツが見えた。
「か、神多……」

――パチン

(僕は……こんな所で………………)
胴体と切り離された首から上だけの瀬流彦の口がそう動いた。

「若さゆえの過ちってやつか……こいつもかわいそうな奴だったな」
短くなったタバコを血溜まりに捨てるとそういい捨てた。

「神多羅木先生……」
「大丈夫かガンドル?」
「一応魔法で出血を抑えてるが……正直止まりそうにない……」
「そうか……」
勢いはないがそれでも血は大量に流れている。顔色もかなり悪い。
「僕回復系の魔法は苦手なんです。だから神多羅木先生お願……」

――パチン

ネギの頬を何かが掠めた。後ろで鈍い音が響く。神多羅木は右手を出している。ガンドルは……

「な、何故だ……神多羅木先生……」
「悪ぃなガンドル……何故と言われても俺もよくわからん」
「え、うあ……ああ……ガンドルフィーニ先生!!」
ガンドルは胴体を真っ二つにされていた。ネギはガンドルを抱きかかえた。

「ガンドルフィーニ先生!!」
「私はここまでのようだ……ネギ君、必ず生き残ってくれ……」
「そんな……ガンドルフィーニ先生は死んではダメです!!」
「お父さんを越えたいんだろ?ならば私達の死を乗り越えるんだ。悲しい事も笑い飛ばせるくらい強くなりなさい……」
そういい残すと穏やかな顔で目を瞑った。
(最後に家族を……娘を抱いてやりたかったな……)

「うわあああああああああああああああああああああああ!!!!!!!」
ネギの絶叫が夜の森に悲しく響いた……。


瀬流彦 ガンドルフィーニ 死亡

【残り 2人】

戻る  進む

魔法先生ロワイヤルトップへ戻る