――現在0時17分。町外れの民家

「やっぱり何をするにしてもこの首輪が……」
「うむ……弐集院先生だったらハッキングして解除できるかもしれない」
「ではまずは弐集院先生を探すと言う事ですね?」
「ああ。では荷物をまとめて出発。この暗闇に紛れて行動する」
二人は荷物を持ち外を出たその時だった。
「ガンドルフィーニ先生……何か聞こえます……」
ネギの一言で一気に張り詰めた空気となった。二人はそれぞれ武器を構える。
(エンジン音……車か?)
徐々に近付いてくる音に二人の心臓の鼓動も早くなる。ガンドルは引き金に指を掛け、ネギは詠唱を始めた。
ついに動く物体を捉えた。それは車。あちこちベコベコにへこんだベンツだった。
そのベンツが二人の数メートル手前で止まるとドアが開いた。二人は身構える。

「む?もしかして俺の事敵だと思っているのか?」
「グラサン先生!」
「グラサン先生って……だから俺の名前は……」
「車から離れて両手を挙げて。そして幾つかの質問に答えてもらう」
ガンドルの命令で名前を教えられなかったのが悔しいのか不貞腐れるように両手を挙げた。

「君はゲームに乗ってるのか?」
「乗っていない。かと言って脱出も出来ないがな」
「ここに来るまで誰かと会ったか?生死は問わない」
「お前達が初めて……いや、鳩の死体となら出会ったな」
「何故ここに来た?」
「俺の支給品は首輪探知機。お前らは安全そうだと思ってここに来た」
「何故そう思う?」
「ゲームに乗ってるなら二人が出会った時点で殺すはずだ。だがそうしないって事は乗ってないと考えられる」
(嘘は言ってないようだ……)
しばらく悩んだ末ようやくガンドルは銃を下ろした。それを見たグラサンスキンも手を下ろし深く息を吐いた。

「まったくヒヤヒヤさせやがって……」
「すまない。状況が状況なだけにね……」
「でもよかったですよ!仲間が増えて」
緊張が解けて三人の顔に安堵の表情が伺える。
「それにしても車が滅茶苦茶ですね……」
「ライトを点けるわけにはいかないからな。お陰で夜道は大変だった」
「サングラスを外せばいいんじゃないか?」
「それはできんな。これはポリシーだ」
少しだけ和やかな雰囲気。それぞれに笑みがこぼれる。

――ピッピッピッピッピッ……

「なんの音だ?」
首輪とは違う電子音。グラサンスキンはポケットから首輪探知機を取り出しその画面を見て驚愕した。
「近くに誰かいるぞ!みんな気を……」
その時黒い球体がグラサンスキンを包んだ。
「な、何だこれ!?一体何が!?」
「これは……時間跳躍弾!?だが学祭限定のはず!?」
「それはただの転移弾ですよ」
「誰だ!?」
声のした方向を見る瀬流彦が歩いてきた。

「高畑先生の支給品がこれでね。どこに転移するかは自分で決められるんですよ……どこに転移すると思いますか?」
「まさか……!!」
「C−2……禁止エリアと言ったほうが解りやすいですかね」
部屋で学園長が言ったことが思い出される。禁止エリアに足を踏み入れた者は首輪が爆破する、と。
「ちょ……ちょっと待ってくれ!!俺は……」
「さようなら」
瀬流彦が手を振るとグラサンスキンを包んでいた球体は小さくなり、そして消えた。
「貴様……なんて事を!!」
「優勝のために決まってるじゃないですか?」
「くっ……!ネギ君!瀬流彦君を……!」
ネギの方を向いて言葉が詰まる。ネギから溢れ出る膨大な魔力によって。

「ネギ……君……?」
「瀬流彦先生……それタカミチの支給品と言いましたね?」
「ああそうだよ。高畑先生を殺して奪ったんだ」
ネギの殺気を含む質問にも平然とした態度で答える瀬流彦。
「僕は……あなたを許さない!」
「丁度いい。高畑先生と互角の君を倒せばみんな僕のことを認めてくれる」
「待てネギ君!落ち着……」
「うわああああ!!!」
ガンドルの呼び止めも聞かずネギは飛び出した。瀬流彦も笑みを浮かべながらそれを待ち受けるのだった。

グラサンスキン 死亡

【残り 4人】

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