「どうして殺したんですか!!助けてくれたんじゃないんですか!?」
涙や鼻水で顔をグシャグシャにしながらネギは感情剥き出しで神多羅木に叫ぶ。
神多羅木はタバコを一服すると呟いた。

「わからねぇんだ」
「え?」
「坊主、人を殺した人間の精神がどうなるかわかるか?」
「何を……」
「テレビでもよく見るだろ。殺人を犯した人間が後悔の念に囚われ自殺とか逆に爽快で反省の色が見えないとか」
短くなったタバコを捨て新たな一本を取り出した。

「戦場はもっと酷いみたいだ。まるでゲームのように殺した人数を競ったりしてるのもいるらしい」
「何が言いたいんですか……」
「人は人を殺すと色んな感情が表れるんだ。喜怒哀楽や後悔、達成感、その他色々とな。だが俺は何も感じなかった。
 教授を殺した時も弐集院を殺した時もな。念のため瀬流彦とガンドルも殺したがやはり何も感じなかった」

「それだけのためにガンドルフィーニ先生も……あなたは狂ってます!!」
「そうだな……俺は狂ってるかもしれない。だが狂ってないのかもしれない。それすらもわからん。
 だから優勝して確認する。自分が狂ってるかどうかを」
神多羅木の魔力が研ぎ澄まされていく。腕を出しフィンガースナップの構えを取る。

「だから坊主、悪いが確認のためここで死んでくれ」
連続で乾いた音が響くと無数の鎌鼬がネギを襲う。それを全て魔法の射手で相殺させた。

「やるな坊主。やっぱり天才ってのはすげえな」
「神多羅木先生、僕は負けません。タカミチやガンドルフィーニ先生のためにも……あなたを止め見せます!!」
ネギは上着を脱ぎ捨てると杖を槍に見立てて構えた。
「おまえと戦えば何かわかりそうだ。まあ勘だけどな…」
神多羅木も今度は両手でフィンガースナップの構えを取る。
両者共にピクリとも動かない。全感覚器官研ぎ澄ませお互いに隙を探る。

(神多羅木先生は遠距離タイプ……瞬動で一気に懐へ飛び込んであの手を抑えれば……!)
(格闘大会を見る限りじゃ拳法使い。恐らく接近して俺の手を塞ぐはずだ……)
(師匠や古老師から教わった事を出し切れば……)
(とにかく成長スピードが半端じゃない。あの時より格段に強くなっているはずだ)

先に動いたのはネギのほうだった。瞬動と風楯を使い一気に間合いを詰める。
(スピードは僕のほうが上だ!それにこれなら攻撃されても…………え!?)
遠距離主体の神多羅木は距離をとろうと後ろに下がる。ネギはそう思っていた。だが実際は違った。神多羅木は前に出てきたのだ。
自身の瞬動と神多羅木の前進であっと言う間に至近距離となった。それこそ攻撃に移る前にお互いは接近した。

「センスはあるがまだまだ経験が足りんな」
神多羅木はそのまま通り過ぎる形でネギの足を払った。瞬動をまだ上手く使いこなせていないネギは簡単に転んでしまった。
「うわっ!!」
「固定概念を捨てないと今みたいにあっさりとやられちまう」
「……不味い!!」
神多羅木は倒れているネギの背中にフィンガースナップを…………放てなかった。ネギの光の矢が目の前まで迫っていたからだ。
慌てて回避するとその隙にネギも体勢を立て直し距離をとる。

(なかなか対応が速いな……だがまだまだだな)
(危なかった……完全に手の内を読まれてた。一旦距離を取って作戦を……)
だが中々そうはさせてくれない。考える間も与えず神多羅木の攻撃がネギを襲う。

「どうした?早く手を打たないと死んじまうぞ?」
(くっ……踏み込む隙がない!)
まるでマシンガンのように放たれる攻撃。避けはするがそこから先に進めない。隙がない。
風楯を出し突撃しても一点を集中して攻撃され風楯を突き破られ、危うく動脈を切られそうになった。

「戦闘中に考え込むのは危険だぜ」
いつの間にか神多羅木の手が目の前にあった。そして……

――パチン


「ぐああああああああああああ!!!!」
草むらに血がポタポタと垂れ緑の葉を紅く染め上げる。ネギの足元には先ほどまで自分の頭についていた耳が落ちていた。
「頭真っ二つだと思ったんだが……あれを避けるとは流石だな」
神多羅木は関心の声を上げながら近づく。絶対に回避不能で尚且つ自分が安全な場所まで歩み寄る。

(熱い!痛い!でも……タカミチやガンドルフィーニ先生はもっと痛い思いをして……)
(目がまだ生きてる……こう言う場合は早めに決めないと後々厄介だ)
神多羅木はちゃんとした距離ではなかったがそれを補うほどの数の攻撃を繰り出した。
(こんな所で負けられない!二人の為にも!!)
「逆巻け 春の嵐 我らに 風の加護を 風花旋風 風障壁!!」
その瞬間ネギの周りに竜巻が起こり神多羅木の攻撃を全て防いだ。

「風障壁……だがもって2〜3分。時間稼ぎにもならん。一体何をする気だ?」
「よし……次で決めます。タカミチ……ガンドルフィーニ先生、見ていてください!」

神多羅木はネギの行動に警戒し、ネギは神多羅木を倒すための準備をする。
障壁が解除するまでの時間は残り1分を切った……。


【残り 2人】

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