森の中、ガンドルとネギは先程戦闘が行われていた海岸に向けて猛スピードで走っている。
「潮の香り……ネギ君ストップだ!」
「どうしたんですか?」
「もう直ぐ海だ。ここからはなるべく気配を消して慎重に行く」
「はい」
ガンドルは銃を構えながら、ネギは杖を構えながら歩いていく。
念のため認識阻害の魔法もかけておく。魔法使いには効果は薄いがやらないよりかは幾分かはマシであるだろう。
慎重に進むにつれ潮の香りが強くなっていく。そして草木の間から砂浜が見え始めた。

「ネギ君、私が様子を見てくる。君はここで待機してくれ」
「そんな……僕も行きます」
「ダメだ。もし罠があった場合二人とも掛かってしまったら助からない」
「じゃあ僕が見に行きます」
「尚更ダメだ。君を危険な目に合わせる訳には行かない。それにこう言う事は私のほうが慣れてるからね」

渋々と引き下がるネギにガンドルは笑顔を向ける。
「心配するな。きっと大丈夫さ。私も高畑先生も」
ガンドルはネギを残し海岸に向けて歩いて言った。

森を抜けると真っ白な砂浜に真っ青な海が現れた。
だが今のガンドルはそんな物は見ていない。ただ一点、何やら鳥が大量に集まっている場所を見ていた。
その鳥が何なのかはガンドルは知らないが少なくとも何かを食べているというのは解った。
ガンドルは周りに誰もいない事を確認するとそこに駆け寄った。

「高畑先生が…………こんな……」
周りの鳥を追い払うとそこには所々食いちぎられた高畑の無残な死体があった。
「こんな姿に……とてもネギ君には見せられないな」
ガンドルは軽く手を合わせるとネギの下へ戻った。

「どうでした!?タカミチは……!?」
戻るなりネギは心配そうな顔で尋ねてきてガンドルは答えに詰まった。
「高畑先生は………………………ここにはいなかったよ」
「え?」
「さあ行こう。街に行けば誰か……」
「ちょ、ちょっと待ってください!」
様子がおかしいガンドルにネギは言い寄るとあの放送が流れた。
『やあ諸君頑張っておるかのお?定時放送の時間じゃ』
「これは……念話!?」
『まずは死んだ者の発表からじゃ。明石教授、高畑・T・タカミチ、葛葉刀子、シャークティー、以上じゃ』
「しまった……ネギ君!」
放送の途中にも関らずネギは海岸に向けて走り出した。学園長が何か禁止エリアがどうこう喋っている。だがそんな事は頭に入らない。
今ネギの頭の中は『死んだ者』と『高畑・T・タカミチ』しかない。

「タカ……ミチ……」
目の前には無残な高畑の死体。頭の中に色々な記憶が駆け巡る。
魔法学校にいた頃魔法を教えてくれた事。麻帆良に来た時の事。学園祭、武道大会の事。
「う……うわあああああああああああああああああ!!」
ネギはその場に膝を付き叫びに近い泣き声をあげた。それを遠くから眺めるガンドル。
「まだ10歳の子供に……これは余りにも酷だ……学園長、私はあなたを恨みますよ」

そらから約1時間後、ようやくネギが落ち着いたので移動を始めた。
だが落ち着いたといっても相当ショックだったのか、一言も喋らず顔は俯いたままだった。
(不味いな……これでは戦闘どころかまともな行動すら危うい。やはり休ませるべきか……)
そんな事を考えていると調度目の前に民家が見えた。二人は民家に入る事にした。

「とりあえず今日はここに泊まろう。ネギ君、見張りは私に任せて君は少し横になって休みなさい」
「……いえ、僕は大丈夫……ですから…………」
明らかに元気がない。いや精気がないと言ったほうがいい。その様子にガンドルは溜息を一つ吐くと少し強いトーンで話した。
「厳しい事を言うが今の君は正直言って足手まといだ。だから今は休ん心の整理をしてもらう」
ガンドルの言葉でネギは暗い表情のまま寝室に向かった。
「許してくれネギ君。君には強くなって貰いたいんだ。君の父以上の魔法使いに……その為にはここで生き残って貰わないと」

ネギは布団に潜り込むとまた泣き始めた。部屋にはすすり泣く声が響く。
「なんで……タカミチ……」
頭の中が混乱する。自分は今何を思っているのか?仕舞いには自分がどこにいるのかもわからなくなった。




――……君

――ネギ君

目を開けるとそこは学園の世界樹。そして目の前には真っ白なスーツ、高畑が立っていた。
「タカミチ!?」
「ネギ君。人はねぇ、どんな形だろうと必ず別れが来るんだ。だからその度にいちいち泣いてちゃダメだよ」
「でもタカミチ……」
「ナギもね……沢山の仲間を失ってた。でも彼は悲しみはしたがそうやっていつまでも泣いてたりはしなかったよ」
「父さんが……?」
「君も泣きつく前にする事があるはずだ。僕らが何を思って死んだのか?君は何をしなくちゃいけないのか?」
眩い光が高畑を包んだ。
「タカミチ……」

――死んだ僕らが生きたかったこの世界を……君は僕らの分まで生きなきゃいけない




「今のは……夢?」
目を覚ますとベッドの上だった。どうやらあのまま寝ていたようだ。
「死んだ者の分まで生きろ……か」
ネギはベッドから飛び起きるとガンドルがいるリビングへと向かった。

「もう気持ちは落ち着いたかい?」
「ガンドルフィーニ先生……先程はすみませんでした」
「……君はこのゲームに対しての覚悟は出来たかい?」
ガンドルは真っ直ぐネギを見据えると優しく、だがどこか厳しい口調で尋ねた。
「はい!」
そしてネギ迷いのない返事と決意の篭った目を見てガンドルはもう大丈夫だと悟った。

「よし、じゃあ食事をして作戦会議だ」
「はい!」
二人は今後の方針を考える事にした。現在9時を回った所。もう外は真っ暗だ。

この暗闇が二人にどのような結果をもたらすのだろうか……

【残り 6人】

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