「あら、刀子先生。こんな所に居らしてたんですか?」
「シ、シャークティー先生!?何故ここに?」
「必要な物資の調達。それと人の気配がしたので……」
島の都市部にあるドラッグストアーで二人の女教師、シャークティーと葛葉刀子は出合った。

「……その両手にある化粧品はいったい何ですか?」
刀子の手にあるもの。それは美白クリームやらパックなど……。
「こここ、これは関係ないです!」
「まったく……こんな非常事態に……随分と余裕なんですね?」
「くっ…!あなたこそここに何の用ですか!?」
「ドラッグストアーなんですから医療品の調達に決まってるじゃないですか?生き残るために化粧品はいらないでしょう」
もっともな意見に刀子も返す言葉が出ない。
「あなたは普段冷静な分一度慌てると全然周りが見えなくなる。悪い癖ですよ?」
「す、すいません……」
痛いところを突かれ項垂れる刀子。確かに刀子は魔法バレ後の世界で刹那達と戦った時などかなり暴走していた。

「それだから前の旦那さんに逃げられてしまうんじゃないんですか?」

シャークティーのその一言で周りの空気一気に変わった。

「あなたに……あなたに私の何がわかるんですか!?あなたこそ影で鬼シスターって呼ばれてるくせに!」
「なっ!?それは関係ないじゃないですか!?あなたも化粧ばかりに力入れて、だからこんな状況でも化粧品を漁るんですよ!」
「うるさいわね!シスターの癖にそんな丈の短いスカート穿いて……はしたないったらありゃしない!」

「年増!!」
「破廉恥シスター!!」

こうなると収拾がつかない。女同士の喧嘩ほど恐ろしいものは無い。
口喧嘩からエスカレートして行き取っ組み合いの喧嘩になるのは時間の問題だった。いや取っ組み合いで済めばまだいいだろう。
刀子が刀を抜き、シャークティーが十字架を取り出した。その時だった。

「何をやっているんだ!!」

一触触発というところで一人の男が仲裁に入った。

「「弐集院先生!?」」
「こんなに騒いで……もしこのゲームに乗った人に気付かれたらどうするんだ」
「「すいませんでした……」」
弐集院のもっともな意見に二人は同時に頭を下げた。
「騒ぎで誰か来るかもしれない。早く移動しましょう。さあ、こっちへ」
二人が冷静になったのを見計らい弐集院は先頭に立ち店の外へ向かった。
「はい……。先ほどは取り乱して申し訳ありませんでした……」
「こちらこそ、あなたの気持ちも考えず失礼な発言をしてすいませんでした」
お互いに自分の非を詫びると弐集院の後を追った。

「所で弐集院先生。何か脱出の方法でも?」
「一応あるけど……とりあえず君たちの支給品を見せてくれないか?」
「……何故ですか?」
いきなり支給品を見せろと言われ流石の二人も警戒する。だがそれを予測していたのか弐集院は表情一つ変えずに続けた。
「僕の魔法は知ってるね?それでパソコンが必要なんだが……もし持って無くても他にも必要なものがあるんだ」
弐集院の魔法は電子精霊。それが何を意味するのか二人は理解した。彼はハッキングを仕掛けるつもりなのだろう。
プログラムに進入しこのゲームを終わらせる。ゲームの破壊は無理でも最悪首輪の解析くらいは出来るだろう。

「そういうことでしたら……パソコンではありませんが……」
「私の支給品はこれです」
目の前の男に希望を持って二人は自分の支給品を差し出した。刀子は手裏剣一式。シャークティーは鍋とお玉だった。
「ちょっと脱出には使えないですね……にしてもシャークティー先生もそんなのが支給品とはついてないですね……」
苦笑いで答える弐集院に対してはぁっと溜息をつくシャークティー。
「おお、そうだ。ついでに私の支給品を……私のはこれです……」

――パラララララララララ

「え?」
何が何だかわからない。何故空が見えるのか?何故背中に地面があるのか?何故視界が赤いのか?
わからない。何故隣でシャークティーが血を流して倒れているのか?何故弐集院先生が私にマシンガンを……

――パラララララララララ

物言わぬ体となった二人を見下ろしながら弐集院は勝ち誇った笑みを浮かべた。
「思った通り……銃器には全て障壁貫通の処理がされている。これなら戦闘力の低い僕でも戦える……」
弾倉に弾を込めながら二人の亡骸に言い捨てる。
「ゲームに勝つには知略。脱出法なんかある訳ないじゃないですか」
二人のバッグから食料を奪うと弐集院はどこかへと去ってしまった。

葛葉刀子 シャークティー 死亡

【残り 6人】

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