2発、3発と地面に巨大なクレーターを残しながら轟音が島中に響き渡る。
轟音の正体は高畑の必殺技・豪殺居合拳である。高畑は舞い上がる砂煙を見つめた。
「攻撃を止めないのなら次からは本気で当てにいくよ」
そう告げると砂煙の中から一人の青年が現れた。
「流石高畑先生。アレを喰らった一溜まりもありませんね」
中から出てきたのは瀬流彦だった。彼は杖を構えたまま高畑に歩み寄っていく。
「瀬流彦君。何故君はこのゲームに乗ってしまったんだい?」
数分前、高畑はこの海岸で瀬流彦と出合った。一緒に脱出をしようと話しかけた時いきなり魔法攻撃をされた。
明らかな殺意の篭った魔法の射手を見て高畑も反撃に出たのだ。
「生き残りたいからに決まってるじゃないですか。こんな所で死ねないですよ」
「残念だよ……君は優しくて誠実で…将来は立派な魔法使いになれると思っていたんだが……」
「だからこそですよ。未熟のまま死ぬわけにはいかない。生き延びて立派な魔法使いになるんですよ」
「どうやら話しても無駄なようだね。悪いけどみんなを危険に晒すわけにはいかないんだ。ここで君を倒させてもらうよ」
「“倒す”じゃなくて“殺す”じゃないと僕は止められませんよ?」
二人は同時に動いた。再び辺りに轟音が響く。高畑の居合拳を瀬流彦は全てをギリギリで回避している。
高畑は気付いていない。自分の甘さに、知らず知らずのうちに手加減をしていることを。
「どうしたんですか高畑先生?さっきから全然当たらないじゃないですか?」
高畑は心のどこかでまだ諦め切れていなかった。もしかしたら更生してくれるかもしれない。
そんな考えが隙になる。
「強い者が必ず勝つとは限らないものですよ」
「なに?」
突然海から魔法の射手が飛んできた。
「なっ!?遅延呪文か……!だが……」
予想外の攻撃にも焦る事なく避けようとした時、何者かに足を捕まれた。
魔法の射手は目の前。回避は不可能。そして……
「まさか君がそんな所に隠れていたとは……」
高畑の足下から瀬流彦が出てきた。高畑は動かない。否、動けなかった。
「戦いを制するには確かに力も必要です。だが一番重要なのは力の有効利用」
瀬流彦の作戦はこうだ。
あらかじめ支給品の式紙を出しておき自分は土中に隠れる。
そしてタイミングよく魔法を発動させあたかも式紙が魔法を放ったように見せる。
居合拳の砂煙で視界が悪くなった時を見計らい海に魔法の射手をセットして置く。
そして上手く高畑を誘い出し発射。土中からの捕縛魔法。更に魔法の射手の捕縛で高畑は完全動けなくなった。
「もう僕をひよっ子だと思わないほうがいいですよ。まあもう終わりですけどね」
瀬流彦が詠唱を始めると大量の光の矢が現れた。
(ネギ君……どうやらここまでのようだ。3−Aを……明日菜君を頼んだよ)
光の矢が一斉に高畑の急所を貫いた。そのまま天を仰ぐように倒れるとピクリとも動かなくなった。
「くっ…!」
瀬流彦もその場に膝を付いた。
(魔法の使いすぎか……だが…!)
もう高畑はいない。恐らく参加者の中で一番の強敵。それを序盤で倒せた。何より自分の手で倒した事により自信がついた。
「とりあえず他の先生が来る前にここを離れないと。どこか隠れられる場所で回復を……」
気だるい体を無理矢理立たせ歩き始める。あの高畑と戦ったのだ。魔力だけでなく精神もかなり消耗している。
(絶対生き残るんだ。生き残ってみんなに認めさせる。僕の本当の実力を!)
彼は歪んだ思いを胸に海岸沿いにある森の中へ消えて行った。
高畑・T・タカミチ 死亡
【残り 8人】
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