「めんどくせー事になったな……」
神多羅木は一人ぼやきながら畦道を歩いていた。のどかな田園風景だが今はそれを楽しむ余裕はない。
あの部屋でこのゲームのルールの説明を聞き荷物を渡された。そして気が付いたら自分は田んぼにいた。
「転移魔法か……どうみても麻帆良じゃねーな。あれだけの人数を同時に遠くまで……やっぱり近衛のじーちゃんはすげぇーな」
神多羅木は歩きながら考えをまとめる。あの部屋での説明についてだ。
1.魔法、気は通常通り使える
これはありがたいのやら厄介なのやら……。何も制限しないと言うことは逆に言えばそれでも脱出は不可能といってるようなもんだ。
それともしも自分より上の使い手がゲームに乗ったとしたら非常に危険だ。
2.首輪について
どうやら爆発するらしい。無理に外す、ショックを与える、禁止エリアに入るなどで発動するらしい。
これも魔法や気で強化しても無駄なんだろう。じゃなきゃ付ける意味がない。
3.ゲームの主旨
これがまったく解らん。質問もすべて却下。ただ最後の生き残った一人は元の世界に帰れるらしい。
期限は2日。決まらなければ首輪爆破。ふざけたゲームだ。
4.支給品
バッグの中には2リットルの水、2日分の食料、地図とコンパス、紙とペン、それとランダムの武器。
各自の持ち物は特に没収はされてなかった。俺のタバコもちゃんと胸ポケットに入ってる。臭いでバレる可能性があるから吸わないがな。
ちなみに俺の武器は練習用の杖。懐かしいもの入れてくれるじゃねえか。これでよく練習してたぜ。
「さて、どうするか…優勝を狙うか、脱出か……。どっちも生き残る確立は絶望的だが……」
その時近くで気配を感じた。それは一瞬だが神多羅木にはそれで十分だった。
「隠れてないで出てきてくれないか?そこにいるのはわかってるんだ」
神多羅木はトラクターのほうを睨み付ける。すると突然銃弾が飛んできた。弾は障壁を突き破り頬を掠めた。
(障壁突破の弾丸か…!不味いな……)
神多羅木は近くの物置に隠れて様子を見る。その時トラクターから人が出てきた。
(あれは……教授?)
「わ、わ私には娘がいるんだ。つ、妻のいない私が死んだら娘は、裕奈は生きていけない!だだ、だから……」
教授は銃を乱射しながら走ってきた。
「私は死ねないんだああああああああ!!」
「ちっ!」
神多羅木も負けじとフィンガースナップを乱射する。指先から無数の風の刃が放たれる。
神多羅木の放った風は教授の弾の弾道を変えながら進んで行く。そしてその刃は物を、空気を、そして教授を切り裂いた。
「うぐっ!?うわああああああ!!」
達磨状態の教授を見下ろしながら神多羅木は言い捨てる。
「悪いがあんただけじゃないんだよ、死ねないのは。みんな生き残りたいんだ」
「ぐっ……!」
「いい人だと思ったんだがな、見損なったよ。じゃあな」
「ゆ、裕……」
――パチン
明石教授死亡 【残り 9名】
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