「風が弱まってきたな。あと30秒くらいか」
障壁の効果が残り僅かだと悟り神多羅木は身構える。
「何を仕掛けてくるのや……ら……」
神多羅木は障壁の中から出てきたものに度肝を抜かれた。そこには数十人ほどのネギがいたからだ。
そしてそのネギ達は一斉に神多羅木目掛けて襲い掛かった。

「分身……いや、たしかあの坊主は使えないはず。だとすると式紙かなにかか……」
神多羅木は冷静に避けながら思考を巡らす。
(偽者に紛れて攻撃って寸法か……)
カウンターを合わして行き徐々にその数が減って行く。その時上空から気配がした。

「ラス・テル マ・スキル マギステル。来れ雷精 風の精 雷を纏いて吹きすさべ……」
ネギが呪文を詠唱する。あと少しという所で腹部を何かが掠めた。
「悪ぃな、坊主……」
「え……?」
呪文詠唱が出来ない。呼吸ができない。下半身が変だ。お腹から下が……

「考えはよかったがな……本物は耳が切れて大怪我なのに偽者は綺麗なまんまだから簡単に見分けられる」
「あ……か……」
「苦しいか?今楽にしてやる……」

――パチン

神多羅木のフィンガースナップを放つとネギの首が体から切り離された。

「終わったか……」
神多羅木は新たなタバコを取り出し立ち去ろうとした。その時上空からボンッ!という音が響いた。
何事かと思い空を見上げると先ほどネギがいた所に紙がヒラヒラと舞っていた。

「完全にやられたな……」

神多羅木がそう呟くとほぼ同時に破裂音が響き黒い球体に包まれた。
「まさか二重に仕掛けてくるとはな」
神多羅木は球体の中で最後のタバコに火を点けた。



ネギは瀬流彦の式紙と転移弾を取り出した。そして一つだけ自分とまったく同じ者を出し、後はワザと綺麗な自分を出した。
結果神多羅木はまんまと本物と同じ怪我をしている一体を本物だと思い込んだ。
そして本物を倒したと油断してる隙に転移弾入りの銃を撃つ。それが今の状況である。


「神多羅木先生……」
「そんな顔すんな坊主、勝負に勝ったんだから胸を張れ」
球体が徐々に縮んで行く。
「坊主、頑張って自分の夢叶えな」
そして完全に消え去ってしまった。

「仇だとか……どんな理由があろうと……人を殺すなんて虚しいだけじゃないか…………!」
ネギは銃を捨て天を仰いだ。
「なんで殺しあわなくちゃいけないんだ!!!!!!!!」
ネギの絶叫が辺りに木霊する。やがて一点の光の柱に包まれるとネギの姿が消えた。



俺は狂っていなかった。何も感じないなんて嘘だった。転移される瞬間に感じた感情……。

――安心感

もう人を殺さなくてすむ。そう思ったからだ。本当は殺しはしたくなかったのかもしれない。でも生き残りたかった。
だから何かと理由をつけて殺し、何も感じないフリをして殺し……結局一番生にしがみついてたのは俺だったってわけか。
教授を殺すときの言葉、今思い出せば笑えてくる。人の事言えねえな。

「本当に、あなたは人を上から見下すようことばかり言って……」
気が付くと神多羅木真っ白な空間に居り、そして目の前には刀子がいた。

「刀子……?」
「そろそろ自分が一番馬鹿だって気付きなさい。そんな事ではパートナーを解約しますよ?」
「心配かけて悪いな。だがもう自分の馬鹿さ加減には気付いた。だからこれからみんなに謝りに行く」
「そう……ならいいでしょう。さあ行きましょう」
「なんだお前も来るのか?」
「当然です」
「彼ともう会えないからって俺に乗り換えか?」
「ばばば、馬鹿な事言ってんじゃありません!!パートナーとしての責任で同伴するだけです!!」
「そうか……でも、おまえの仇をとるってのは本気だったんだぞ?」
「…………ばか……」

二人は歩きだすと、やがて光に包まれ消えて行った。

神多羅木 死亡

【優勝 ネギ・スプリングフィールド】

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