「はぁはぁ……」

これは夢だと信じたい。悪い夢だ。悪夢なんだ。じゃなきゃこんな状況ありえない。
クラスメイト同士で殺し合いなんて――

「あぐっ……!」
痛い。ナイフが足に刺さった。半端なく痛い。あまりの激痛で私はその場に倒れた。
目が醒めないからやっぱり現実なの?違うよね?ありえないよこんなの。


なんで……

「なんでそんな簡単に人を殺せるのよ!?答えてザジさん!!」

普段無口のザジさんが相変わらずの無表情で悠然と立っている。
いや、無表情には変わりないが明らかに今のザジさんは不気味だ。学園の人畜無害な雰囲気は微塵もない。
「……こそ」
「え?」

ザジさんが何か呟いた。あまりにも小さかったので私はもう一度耳を澄ませて聞いた。


「 よ う こ そ ナ イ ト メ ア サ ー カ ス 主 催 の バ ト ル ロ ワ イ ヤ ル へ 」


最初で最後に聞いたザジさんの声は冷酷でまるで悪魔のようだった。




血溜まりの中ザジはしばらく立ち尽くしていた。目を閉じ全神経を集中させ次なる獲物を探しているのだ。
その周りの空気はどこか異質で禍々しいものだった。

「見つけた……」

ふと目を開けると新たな血の匂いがする方角を見た。その目はまるで獲物を狩るかのようだった。
ナイフに付いた血を舐め取り営業スマイルになると次なるショーに向けて歩き出した。

「It's show time……」


悪夢を届ける道化師によるナイトメアサーカスの殺戮ショーは始まったばかりだ。



おわり

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