「楓……じ、実はおまえのことが好きなんだ」
それは突然の事だった。龍宮が楓の修業場に来た第一声がそれだった。
「拙者も好きでござるよ♪」
「ほ、本当か!?」
速答だった。あまりの返事の早さといつもの落ち着いた雰囲気に龍宮は聞き返した。
「ああ、大事な親友でござる。」
龍宮もこう見えて女子中学生だ。まったく悪気のない無神経なこの一言に怒るのは当然である。
「っ……!この馬鹿者!」
「な、何を!?」
「私の好きとはこういう好きだ」
一気に押し倒し楓の服を次々と剥いでいく。楓の中学生とは思えない肢体が露になっていく。
「や、やめるでござる!!」
「それは無理だ。私をこんな風にさせたおまえが悪い」
クラスNo.2の胸の先端を舐め回す。その度に楓の呼吸が乱れていく。そして下半身に手が伸ばされる。
「やめないのなら……」
突然楓の目が開いた。
「は…?」
龍宮の視界から楓が離れていく。否、自分が離れていた。何者かが引っ張ったからだ。
「拙者がいじめるでござるよ。ニンニン♪」
見れば楓が両腕をガッチリ捕まれている。そう、いつのまにか楓は分身を出していたのだ。
「え?ちょ……」
まったく状況が飲み込めない様子の龍宮。楓はその龍宮の頬にそっと手を這わせ顔を近付けた。
吐息がかかるくらいの距離、いつもと違う悪戯っぽい笑みでそっと呟いた。
「拙者も恋人として好きでござるよ」
この一言に龍宮は顔真っ赤にするしかなかった。
「貴様、最初から私の気持ちを知ってて……!」
「真名をからかうのは面白いでござるな〜」
「くそ……私を馬鹿にし……んむ!?」
龍宮の抗議も楓の口付けによって遮られる。舌、吐息、唾液と次々と侵入してくる。
完全に楓のペース。龍宮はされるがままだった。
やがて唇が離されると唾液が名残惜しそうにつーっと糸を引く。既に龍宮は放心状態だった。
「可愛いでござるよ。真名……」
おわり
寒い……。暖冬だとか今年は雪は降らないなどの予想を見事に裏切ってくれた。
昨日は楓の修業に付き合いそのまま一晩過ごした。そして朝テントから出てみれば雪景色だった。
当の楓は朝から大はしゃぎ。あの落ち着いた楓が私にだけ見せてくれる意外な一面。
私にだけ見せるという優越感に浸っていると楓が大手を振って呼び出した。
「真名!鎌倉作ったでござるよ!一緒に入らぬか?」
「私はそういうのは……」
「そう遠慮せずに。ささ、奥へどうぞ」
はっきり言うとこの手の遊びは慣れてない。私が躊躇してると楓は私を無理矢理鎌倉に押し込んだ。
中は意外と広く、双子とエヴァンジェリンと綾瀬が入っても余裕がありそうな位だ。
「よいしょっと。どうでござるか?」
「あ、ああ……」
楓が入ってきて彼女の顔がアップで映された。私は恥ずかしくなり距離をとった。
「ほれ、もっと近づくでござる。寒いでござろう?」
楓は私を抱き寄せた。その拍子で私と楓の顔は数センチの距離となった。
「おまえ手が冷たいぞ。大丈夫か?」
「これから真名に温めてもらうから平気でござる」
「よく言うよ……」
そのまま私は楓の唇を奪った。
この雪が溶けるほどの熱く激しいキスを。
おわり
「なかなかいい場所だな」
「拙者と真名だけの秘密の場所でござるからな」
私達は花見に来ている。まぁ半ば楓に無理矢理連れてかれたのだが。
「ほい、弁当。それと……飲み物でござる」
弁当はとても美味そうだ。同室の刹那も見習ってほしい。飲み物は一本の茶色のビン。大吟醸と書かれている。
「これは私達が飲むものじゃないな」
「固いことはなしでござる。真名も好きでござろう?ささ、一杯」
確かに嫌いではない。私はコップに注がれた日本酒を口に含んだ。芳醇な香りが口一杯に広がる。
「やっぱり花見はこうしてのんびり楽しむものでござるな」
「そうだな……」
「最近の若者は花見の楽しみかたをわかってないでござる。花見など単に騒ぐ口実でしかないのでござろう」
「何を年寄りじみた事を……」
すまない楓。私も楓の言うその若者と同類かもしれない。
何故なら私も花見など楓と一緒にいるための口実でしかないから……
おわり
「いい天気でござるなぁ……」
「……そうだな」
二人は世界樹の根元で肩を寄せ合って座りのんびりとしていた。
ゴールデンウィークで殆どが帰省や旅行にいってしまい人が殆どいない。二人を邪魔するものは何も無い。
「お腹空いたでござろう。ほい、おにぎり」
「ああ、すまない……だがいくらたらこの握り飯が好きだからと言っても全部たらこはありえんだろ」
「残念だが冷蔵庫にはたらこと海老しかなかったでござる。まあ真名が海老マヨおにぎりを食べ……」
「いただきます。うん、美味い」
あっと言う間に二人はおにぎりを平らげまた青空を見上げながらのんびりする。
二人の間には会話はないが別に苦ではない。とても穏やかなひと時。ふと楓は思った。
昔の彼女ならとても考えられなかった。傍にいる者全てに神経を張り巡らせ常に警戒していた。
比較的仲のよかった刹那でさえ完全に気を許すことはなかった。
だけどいつの間にか彼女は自分に近付きこうして接してくれる。
その時、楓の肩に体重がかかった。見れば真名が楓の肩に頭を預けて寝息を立てていた。
「ふふふ……いい寝顔でござるなぁ」
普段の厳しい雰囲気など微塵も感じない安心しきった寝顔。楓は起こさないように真名の頭をそっと自分の膝に持っていった。
「まだ誰も知らない拙者にだけ見せる本当の真名……何とも言えない優越感でござるなぁ」
楓はそのまま体を丸めると真名の頬にキスをした。
「大好きでござるよ……」
おわり
○月×日
朝起きたら楓がカッパになっていた。とりあえず頭の皿を撫でてみた。
「カパ!?や、やめるでござるぅ〜!」
あまりにも可愛かったので抱き締めた。気が付けば夜になっていた。
「お腹空いたでござる……」
夕飯を食べる。口の周りに食べカスが付いてたので拭ってやる。至福の時間だった。
夜、楓を抱き枕代わりにして寝た。いい夢が見れそうだ。
○月×日
朝起きたら真名が熊になっていた。とりあえず毛皮をモフモフしてみた。
「やめろ……」
ちっちゃくなっても相変わらず無愛想だ。でもそんな所が可愛いのでギュッと抱いた。
「楓……腹が減った」
夕飯を食べデザートにあんみつを出した。先程と打って変わり最高の笑顔で食べる。
可愛いすぎるでござる……。毎日熊でいてほしいと思う一日だった。
シトシトと雨が降り注ぐ。教室で楓はそれをただボーッと見ていた。
「今日はここまで。来週はP78からだから予習しとけよ」
最後の授業が終わり昇降口に向かう。楓は鞄からから折畳み傘を取り出そうと手を入れた。
「どうした楓、まさか傘でも忘れたのか?」
結局楓は何も掴む事無く鞄から手を引いた。
「うむ、うっかりしてたでござる。だから一緒に入れてはくれないか?」
「仕方ないな、ほら、入れ」
龍宮に促され楓は肩をくっつける。
「ち、近すぎだ……」
「気にしたら負けでござるよ♪」
梅雨の時期は欝陶しいと思っていた。
けど、こういうことがあるなら好きになれそうだ。
――さて、明日は雨は降るだろうか?
おわり
「暑いでござる……」
仕事が終わりが自室に戻った第一声がそれだ。いつのまにか楓は私のベットに寝ている。
「また勝手に侵入したのか……」
「折角真名に会いにきたのにひどい言い草でござるな。飯も用意したというのに」
私と刹那以外が侵入すれば防犯装置が発動するはずだが何事も無かったかのように美味そうな飯が用意してある。
「呆れた……それになんだその格好……いくら暑くても寝冷えするぞ」
パンツにサラシで布団も掛けずに寝そべっている。男でなくても襲いたくなるほど無防備だ。
だが私は知っている。これは楓の“罠”だと。
罠に掛かったら最後、あっという間に食われてしまう。どんなに攻めようとも往なされ逆転されてしまう。
「飯よりも先ずはおまえを食べる」
だが罠だと分かっていて誘いに乗る私がいる。そういう趣味なのだろうか?
私だけが分かる楓の笑顔の微妙な変化。その妖艶な笑みに私の心が躍る。
――今宵もまた淫らな罠に掛かるのだ
終わり
学生やサラリーマンなどで埋め尽くされる朝の電車内。勿論私と楓もその中の一部だ。
「思ったんだが……私とおまえならわざわざ満員電車に乗らなくてもいいんじゃないか?」
私達の常人離れした身体能力を持ってすれば電車よりも早く学校につくことも可能だ。だが楓は私の提案を断る。
「これだけギュウギュウ詰めならいくら真名に密着しても怪しまれぬから……」
そういって体重を預けるように更に密着してきた。シャンプーの微かな香りが鼻をくすぐる。
楓の温もりを感じてるといつのまにか駅に付いていた。いつも長く欝陶しかった満員電車の時間がやけに短く感じた。
どんな事でもブラスに転換できる楓は凄いと思う。それは自分にはないものだから余計にそう感じる。
だから私は彼女のそんな所に惹かれ、そして惚れたのだろう。
――今日もまた一つ楽しみが出来た。明日も電車に乗ろう
おわり
まだお互いの事をよく知らない頃の話だ。私は楓の修業とやらに付き合うことした。
一通り修業は終わり夕飯時に各自材料を調達することにした。私は割りと早く集まったので先に用意をしておいた。
料理が完成した丁度その時楓も数匹の魚を持って帰還した。
「おお!美味そうな鍋でござるなぁ!」
「まあ遠慮せずに食え」
「いただきます。……うん!きのこの香りがいいでござるなぁ。それにこの鳥肉もまた絶品、一体何の鳥でござるか?」
「ああ、それは鳥じゃなくて蛙だ。なかなか美味いだ……」
それからはあまりよく覚えていないが、狂気と殺意が入り交じった瞳で睨め付けられたのは覚えている。
気が付けば全身包帯で病院に寝ていた(後に聞いたが二週間も目を覚まさなかったらしい)
それ以来私は蛙を見つけ次第射殺している。動物愛護なんて気にしてられない。
まだ死にたくないからな……
おわり
「これはお前が言い出したことなんだぞ?」
「わ、解ってるでござる……」
今日二人で田んぼに来ている。理由は楓が蛙嫌いを克服したいと言い出したからだ。
だが当の楓は私から一歩も離れようともせずただ震えてるだけだった。
これはこれで可愛いし嬉しいのだがそれではここに来た意味がなくなる。
「ええい!離れんか!!」
「いやでござるうう!!いきなり田んぼはハードルが高すぎでござるよおおお!!」
ダメだ。こいつ完全にキャラが崩壊している。
仕方ないので楓の言うとおりハードルを下げてみた。
「ケロ○軍曹のグッズに埋め尽くされた気分は?」
「これなら大丈夫でござるよ♪」
「マスコットは合格……っと」
次はとっても恥かしいがこれも楓のためだ。我慢しよう……
「つ、次は蛙のコスプレだ……///」
全身緑のタイツに頭に被りものというなんとも手抜きなコスプレ。かなり恥かしい……
「待ってましたでござる!!」
「『待ってた』ってどういう……ってちょ……」
「う〜んこのピチピチのラインがとってもエッチでござるよ」
「貴様!謀ったな!!?」
「ん〜なんのことでござるかな?」
こいつは最初から克服しようと思ってなかったのだ。ただ私にコスプレさせれればなんでもよかったのだ。
まあ、こーゆーのも悪くはないなぁ、と思った自分が悔しかった……
おわり
雨戸がガタガタと揺れる。ニュースによると台風が接近してるようだ。
だが別にどうしようとも思わない。どうせ明日には通過してまた暑い日が続くのだ。
いっそこのまま台風に居座って貰って明日の学校を休みにしてもらいたい。
そんな事を考えていると玄関の呼び鈴が鳴った。
「真名〜いるでござるか〜?」
相手は楓だった。勿論断る理由がないので玄関を開け招きいれようとしたがその楓の姿に私は驚いた。
「その格好に枕に布団……お前まさか……」
「そのまさかでござる。今夜は一晩止めてもらうでござる」
「意味がわからない。なぜわざわざここで寝る必要がある?お前は双子のお守りをしなきゃまずいだろ」
「二人ともこの台風を楽しんでる様子だったし『子ども扱いするな』と言われたのでな」
台風如きではしゃぐ時点でまだまだ子供だろうというツッコミは置いておこう。
「お主一人で寂しいだろうと思ってな。どうせ刹那も木乃香殿の所であろう」
「べ、別に寂しくは……というかお前が一緒に寝たいだけじゃ……」
私の言葉は全く無視と言ったようで勝手に上がりこみ勝手に寝床を作り始めた。
なんというか、嬉しそうに布団の位置や枕の高さを調整してる楓もなんだが可愛かった。
「仕方ない……今回だけだぞ」
「おお、かたじけない!では今回はサービースでござる。ドロン♪」
一瞬楓の周りを煙が覆ったかと思えばそこには幼女がちょこんと座っていた。
「真名お姉ちゃん、一緒に寝るでござる♪」
まさに反則技だ。断る理由もない。私は本能のまま抱きしめるとそのまま寝床についた。
計画通り……とか聞こえた気がしたがそんなことはどうでもいいほど楓に夢中な夜だった。
おわり
事の発端は私が部屋で暇つぶしに刹那にちょっかいを出してた時のこと。
天性の総受けなのだろうか?刹那をいじめる度にこちらのS心が擽られる。
だんだんとエスカレートしていき遂にブラウスのボタンに手を掛けた、まさにその瞬間だった。
「……何をしてるのでござるか?」
一瞬にして部屋が凍り付いた。血の気が引くどころの騒ぎじゃない。完全に血が消え失せたと錯覚するほどだった。
「あ、いや……その……わ、私はお嬢様のところへ!御免!!」
「な、刹那!待っ……」
「真〜名♪」
逃げ出した刹那を追いかけようとした時、背後からの楓の甘い声に私の動作は停止した。
その甘い声もこの状況では最高に恐ろしい。
「これから拙者がご飯を作るでござる♪」
笑顔が恐かった。断れるはずもなく私は言われるがままにテーブルの前に座った。
反省の想いだろうか、私は自然と正座をしていた。
野菜を切る小気味よいはずの音も普段より大きく、力任せな音に聞こえる。
調味料を入れてる時も疑心暗鬼になる。包丁を研ぎだしたときなど走馬灯さえ見えはじめた。
そうして私がビクビクしてるうちに料理は完成した。
「はい、あ〜ん♪」
「あ、あ〜……んむ……」
「美味いでござるか?」
「あ、ああ……とっても……それでさっきの……」
「あ〜〜ん」
「いや、あの……さっきの刹那の……」
「あ〜〜〜〜ん」
「……やっぱり怒ってるのか?」
有無を言わさず料理を突き出す楓の手が止まった。楓は少し考えると満面の笑みで答えた。
「ぜ〜んぜん怒ってないでござるよ♪」
その笑顔を見て私は安心した。やはり楓は優しいくていい奴だったん……
――ガシャン!
前言撤回。楓が持っていたお茶碗と箸が粉々に砕け散るのを見て私は床がへこむ程頭を下げ土下座をした。
こうなれば泣き落としでもなんでもいい。頭の中は“生きたい”の四文字だった。
だが残念なことに楓に泣き落としは逆効果だった。
「ふふふ、真名の泣き顔も中々そそるでござるなぁ♪」
その日の夜のことは今もトラウマとなっている。
結論
楓は怒らせるべきではない。もう二度とあんなことは……
おわり
毎年この時期になると恒例の騒ぎがある。その騒ぎに備えて私は玄関にお菓子を置いておく。
……そろそろ奴らの声が聞こえ始めた。
「トリック・オア!」
「トリートですぅ!」
毎年双子がこうして各部屋にお菓子を求め回ってくる。
私は一々招き入れて対応するのが面倒くさいので玄関にあらかじめ備えておくのだ。
「なんか素っ気ないけどまぁいいや!じゃあ次の部屋に行くよ!」
「はいです!」
やれやれ、騒がしい奴らだ。そもそも奴らはハロウィンの意味を知っているのだろうか?ハロウィンはカトリックの……
「とりっくおあとりぃとでござる」
どこから入ったか知らんがカボチャのお面を被ったデカぶつが怪しい英語を喋りながら目の前に立っていた。
「…………何してるんだ楓?」
「プリンかイタズラしにきたでござる」
「プリンはない。そこに飴があるからそれ持って帰れ」
「プリン以外に興味はない。というわけでイタズラすることに決めたでござる」
「ま、まあ待て。今から買ってきてやるから……」
「もう遅いでござるよ」
――イタズラされた……
おまけ
「お前……プリンがあってもヤルつもりだっただろ?」
「ん〜なんのことでござるかなぁ♪」
どうやら最初からこっちが目的だったらしい。おのれ……覚悟しておけよこのエロ忍者め……
おわり
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