「ただいま!」
彼が帰ってきました。私は満面の笑みで彼を迎えます。
「おかえりなさい」
彼は手際よく晩ご飯の支度を済ませます。でもその姿を見る度に私は……
「いただきます……って、どうしたんですか?」
「……私、幽霊で何も出来なくて……本当に……ごめんなさい……」
折角あのクラスメイトから選ばれたのに何一つ出来ない自分。申し訳ない気持ちで一杯でした。だけど彼は言いました。
「気にしなくてもいいですよ。僕はさよさんが一緒に居るだけで幸せですから」
60年の間色んな人を見てきましたがこれほど正直で綺麗な顔は見たことがありませんでした。
「……ありがとう……ございます………」
朝倉さんというお友達が出来て彼にとても愛されて……私はとても幸せでした。
――70年後
病院の一室で彼は静に息を引き取りました。
「やっと……対等になれましたね……」
「はい……」
「70年間本当に幸せでした」
「私もです……」
「行きましょう。何もなく静かな場所で……二人で永遠に……」
「はい」
私たちはしっかりと手を繋ぎました。暖かい光が私たちを包みます。でもそれ以上に彼の手の温もりが気持ちよかったです。
――僕(私)は永遠にこの手を離さない
おわり
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