私はまた生き残ってしまった。

『残ってしまった』と言う事は私は死にたかったのだろうか。

昔の私がこんな台詞を聞いたらどんなこと言われただろうか。


私は何百年と生きてきて人の死は沢山見てきた。もう慣れた筈だった……


何故だろう。胸が痛い。

何故だろう。目尻が熱い。

何故だろう。この孤独感。

いや、孤独感は前からあった。ただあいつらの所為で忘れてただけだ。

親父と違い純粋で真面目だった少年。

馬鹿で自分勝手だが人外の私と普通に接してくれた少女。

馬鹿みたいに騒がしかったあのクラス。

居心地は悪くなかった。だがあいつらはもういない……。


だから初めてだった。他人の為の復讐は……。

「今夜は満月か……」

私は漆黒の翼を広げるとあのゲームを可決させた政府がいるであろう場所に向かって飛び立った。

「フフ……チャチャゼロ、私は馬鹿だろう?」
「アア、馬鹿ダナ。他人ノタメニ動クナンザ大馬鹿ダ。デモ、マア……ソレモイインジャネーノ?」
「そうか……さあ、一暴れするぞ。殺し方に関しては自由だが……」
「出来ルダケ残酷ニ……ダロ?」

エヴァはニヤリと笑うと魔力を集中させた。そして……


――紅い屍の中で氷のように冷たい表情の少女

――悲しい表情で夜空を見上げる少女

――美しい満月がいつまでも少女を照らしていた


おわり



「ん……ここは?あれ?私銃で撃たれて死んだような……」

美空は辺りを見た。そこはどこかのマンションらしき部屋だった。
窓の外を見るとどこかの街らしい。勿論ゲーム会場じゃない事はすぐにわかった。

(天国じゃなさそうだけど、一体ここは……)

そこで美空の思考は中断した。人の気配がしたからだ。

「誰!?」

美空はその人物を見て驚愕した。そこには先程目の前で死んだはずののどかが怯えるように立っていたからだ。
よく見ると他にも生徒がいたがどれも放送で呼ばれた生徒だった。

(なんで死んだ生徒が!?)

すると突然部屋に聞き覚えのある歌が流れた。

『あ〜た〜らしい、あさがきた♪』

音のするほうをみるとそこには黒い球体があった……


おわり



出席番号21番那波千鶴は森の中にいた。

「とりあえず荷物を確認しましょうかしら?」

静まり返った闇の中にバックのファスナーの開く音が響く。

「あらあら、どうやら当たりのようね」

那波の武器、それは他の生徒にしてみれば間違いなくハズレであろう。
しかし千鶴にとってはそこらの銃火器なんかより遥かに殺傷力は高い。

その武器とは……




長ネギ



とある民家の物置の中で明石裕奈は休んでいた。いくらバスケ部と言えどさすがに体力と精神力に限界が来ているのだ。

――もう無理だ

――自殺しようか

――自分は生き残れない

そんなネガティブな事を考えてしまう。
しかし、あの人、彼の一言を思い出すとまた頑張れる。


『諦めたらそこで試合終了だよ』


――まだまだやれる

――絶対に諦めない

――必ず生き残る

そう自分に言い聞かせ自らを奮い立たせる。

「先生、(帰って)バスケがしたいです……」

裕奈は勢いよく扉を開け生き残るために死合い会場へと走っていった……


おわり




民家の屋根の上、そこにはショートカットの少女が寝転がっていた。

「めんどくせっス……」

彼女は春日美空(出席番号9番)既に殺し合いが始まっているというのに唯何をする訳でもなくボーっとしていた。

「そりゃあ私だって生き残りたいけどさ……」

彼女は良くも悪くも快楽主義者だ。楽しい事優先で嫌な事、面倒事が嫌い。だからイタズラもするし任務もサボったりする。
自由気ままな彼女にとってこの状況はまさに不快で面倒な事だった。

「生き残ってもみーんな居ないし……社会からは変な目で見られるだろうしねぇ……」

空を見上げる。雲一つない真っ青な空。

「『美しい空』で美空……か。今考えるといい名前だよねぇ」

自分があの空だったらどれだけ楽か。悩みもなく世界のすべてを眺め、偶に雨や雪を降らせてみたり。

「天へ召されると私も空になれるのかな……」

両手を枕代わりにし足を組む、これが彼女の何時もの昼寝スタイルだ。

「人殺しも面倒事もゴメンっス。私はこのゲームを“サボる”よ……」

そのまま目を瞑ると昼寝を始めた。

(てか痛いのも嫌だなぁ。殺るなら寝てる間にしてほしいっス……)


それから彼女は昼寝から覚めることはなかった。腕に刺さった注射器によって二度と。

彼女が最後に見た夢、それは“真っ青”。彼女の名に相応しい美しい空の夢だった……


おわり



「では番号順に……2番明石裕奈!」
(マジで殺し合いッスか……まだ死にたくねぇッスよ)




「次!8番神楽坂明日菜!」
(うわぁ…もう次じゃん!)
「よし!次は10番絡繰茶々丸!」

(……あれ?飛ばされた?)




「はい、最後31番ザジ・レイニーディ!……ふぅ、これで全部か。全員モニター室に移動!」

「よろこんでいいのか複雑ッス……てかなめんな!」




「まてよ?これはみんなを助けるチャンスじゃん!」

美空は教室を出るとモニター室を探した。途中何度も兵士とすれ違ったが誰一人気付かなかった。

「あったモニター室!あのコンピューターをブッ壊せばゲーム終了!」

美空はくる途中に拝借したモップの柄を握り締めた。

「よし!うおぉぉ……」

「10分たちました。学校を禁止エリアにします」


――バーン!


おわり



体が動かない……そっか、私撃たれたんだっけ。お腹から血が止まんないからかな。
悔しいなぁ……結局なにもできないまま終わっちゃうのか……

もっと生きたかった。もっとみんなと一緒にいたかった。

ネギは大丈夫かな?私が死んで変な責任感じてなきゃいいけど。

雨降ってきた。寒い……木乃香の味噌汁が飲みたいな。京風で出汁が効いてて……

「明日菜さん!」

誰だろ?暖かくて懐かしい……

「しっかりしてくださいまし!明日菜さん!」
「い……いんちょ……」

あんた雨でびしょ濡れじゃない。折角の綺麗な髪が台無しじゃない。

「なにバカなことを言ってるんですか!本当に……お猿さんなんですから……」
いいんちょの泣き顔なんて何年ぶりかな?小学生以来だったかな?あの時から喧嘩してばっかで……でも楽しかったなぁ。
……そっか、もう戻れないんだ。あの喧嘩して笑いあった頃には……
じゃあ最期くらいちゃんと伝えなきゃ……あっちで後悔しないように。

「いままで……ありがとう……」

もしこっちに来たらギッタギタのボッコボコよ


――だから私の分まで生きてよね


おわり



カオスロワイヤル
漫画サロンのキャラ設定で書いてみた。キャラ崩壊しすぎなので見るのは自己責任です。


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