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いつもの酒場に入ると見知らぬ男が私の指定席(と言っても勝手にそう決めているだけだが)に座っていた。

「ちょっとアンタ」
「ん?俺に何か用か?」

――これが彼との出会いだった


『坊主女と赤髪男』



振り向いた男の顔はフードで隠れていて分からなかったが声からしてまだ若いだろう。

「何じゃないわよ。そこはアタシの席なの」
「はあ?んなのどこだっていいだろ。それに空席ならいっぱいあんじゃねーか」
「……アタシが誰だか知らないようね」
「生憎俺は余所者なんでね」

こういう勘違い野郎はぶっ潰す。ボコボコにして町の晒し者にしてやるんだから。

「泣く子も黙るバルガスたぁアタシの事!アタシにかかればアンタなんか一捻りよ!」

「バルガスが本気だぜ!」
「あの男死んだな」

どうよ、このアタシからあふれ出る濃密な魔力!これでビビらない人間は普通は……

「おお、お若いくせに中々の魔力じゃん」

ビビらない!?てかアンタに若いなんて言われたくないわよ!

「余裕ぶっこいてられるのも今の内よ!」
「黙ってりゃ可愛いのに……勿体ない」
「う、うるさーい!!」

もう怒った!アタシの魔力を全力に込めたパンチで二度と口をきけないよう顔面を……ってあれ?手が動かない?

「まあまあ、女はおしとやかじゃなきゃモテないぜ?」

アタシの手が動かなかったのはアイツが後ろから手を掴んでいたからだった。

「ア、アンタ……なんで後ろにいるのよ……」
「なんでって今移動したじゃん。見えなかった?」

そんなバカな!ありえない!ありえない!ありえない!ありえない!!
このアタシが見えないなんてありえない!!!!

「うわあああああ!!!」
「やれやれ、怒ると体に毒なのに……ちょと眠ってもらうか」





気が付けば酒場のソファーで横になっていた。どうやら幻術で眠らされたらしい。

「目が醒めたかい?」

目の前の眼鏡男が尋ねてきた。

「ツレが悪いことをしたね」
「……アンタ等一体何者だ?」
「紅き翼って知ってるかい?」
「この世界で知らない奴のほうが少な……ってまさか!?」
「あんまり他言はしないでくれよ。サウンドマスターがいるなんてバレたら何が起こるかわからないからね」

どうりで強いわけだ。アタシなんかが勝てる相手じゃない。

だけど……

「納得いかねぇ」
「ん?」
「おいアンタ、サウンドマスターはどこにいる?」
「う〜ん……彼は気紛れだからどこにいるかは……でも半月はこの町に留まる予定だから頑張って捜してみたらどうだい?」
「半月だな……よぉし!」
いくら強いからって手加減するなんて許さねぇ!もう一度、今度は本気で戦ってもらわなくちゃな。

その為にはまずアイツを捜さないと……

「おい、詠春。ちっとばかし金を貸してくれい」
「あ……」
「ん……?」

アタシが考えを巡らしてる時突然アイツは店に入ってきた。

「てめえ……!」
「おお目醒めたか!」
「うっさい!やいサウンドマスター!アタシと手加減無しで勝負しろ!」
「ちょっと遊びすぎちゃって買い物する金無くなっちまってさぁ」
「アルに怒られるのは私なんだからしっかりしてくれ」
「聞けええええええええ!!」

この私を無視とは……とことんバカにしやがって!

「断る!!」
「え?」
「女に手を出すのは気分が悪いんでね」
「夜になれば色んな娘に手を出してるじゃないか」
「詠春黙れ。とにかく弱いもの虐めは嫌いだし女を殴るのはもっと嫌いだ!」

女は殴れない。おまけに弱いもの虐めときたか。トコトン舐めやがって……

「わかったよ!男だったらいいんだろ!ちょっとそこで待ってろ!!」


――数分後


「これでどうだ!!」

見ろこの頭を!スキンヘッドの女なんていないだろ!!

「うひゃひゃひゃひゃひゃ!!なんだその頭!!つるんつるんじゃねーか!!あはははははは!!!」
「わ、笑うなああああ!!いいか、これで私は男だ!勝負しろ!!」
「あははは……は〜あ、おっけーおっけーその心意気ナイスだぜ。ぷくくく……」

この野郎……笑いすぎだっつーの!…………ああ、くそ!恥かしいよぉ………………

「じゃあ参ったって言うまでな」
「お、おう!いつでも来やがれ!!」
「そんじゃ行くぜ!」

さっきは冷静さがなくなってたから見切れなかったんだ。集中して見れば……

「見えた!!」
「うごおっ!?」

決まったあああ!!見事なカウンターパンチ!!サウザンドマスターも案外たいしたこと……


――カクン

はれ?足が動かない……てか全身動かない!?……え?もしかしてアタシまたこの男に……!?

「テメーの敗因は…たった一つだぜ……バルガス…」
「なにいいい!?なぜお前がそこに立っているんだあああ!?」

簡単に言うとアタシが殴ったのは偽者らしく「じゃあ参ったって言うまでな」という台詞の時には既に入れ替わっていたらしい。
隙を見て手足が動かなくなるというなんとも都合がいい秘孔を突いたらしい。そんなんアリかよ……

「さ〜て、どうやって『参った』って言わせようかなぁ?」

奴は不気味な笑みを浮かべながら手をワキワキさせていた。

「ま、まて!これを読んでる人の中には未成年のよい子もいるんだ!それはマズイんじゃないか!!?」
「バルガスさんのえっち〜別にんなことしねえよ。ただ……」
「ただ……?」
「『参った』って言うまで……くすぐる!!」




「うぅ……ぐすん…………」
「わははは、わりぃ!やりすぎたわ!」

鬼だ……こいつ本物の鬼だ!いや悪魔か?なんでもいいが間違いなく良い奴ではない。

「そんじゃあ暇も潰せたしちょっと早いが次の場所移動するぞ!詠春、街の南に集合って伝えとけ」
「はいはい」
「そんじゃあな。もっと強くなったらまた相手してやるよ!」

そういい残すとまるで煙のように消えてしまった。

「うちのリーダーが迷惑かけたね。ではまたいつか会えたら」

続いて眼鏡男も去っていった。アタシはそこに一人残された。





あれから数年。鍛えて鍛えて鍛え直しいつでもリベンジの準備は出来ていた。

「バルガスの姉貴!さっき見知らぬ男二人と女の子二人が酒場に入っていきましたぜ!」
「ふぅん!いっちょ肩慣らしにいくか!」

まってろよサウザンドマスター今度こそ絶対リベンジしてやる!
てか早くこの街に戻って来いよ。退屈だぜ。


――あ〜早く会いてえなぁ……



おわり

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